エロひな！　　

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もうすぐ、先生を起こす。
いつもの時間、いつもの場所で。
繰り返し繰り返し延々と繰り返される。
僕が言えなかった
あの言葉を言うために。

さぁ、合図だ。
僕は指を先生の目の前でぱちんと鳴らす。
おはよう。
【・・・おは。よう？
あなたは、誰？】
いつも繰り返される言葉だけど
聞くたびに僕はちょっと寂しくなる。

僕は、僕。あなたは、ひなた先生だよ。
【せん。。せい？】
先生は、いつものとおり部屋の中をちょっと見回して
不思議そうに頭に手をやる。
僕が巻いてあげた、包帯でぐるぐるになった頭に。

あぁ、ちょっと痛むかもしれない。怪我してるんだ。

【怪我。思い出せないんだけど。】
先生がスローモーションな動きで僕を見上げる。
。。。思い出せないのも無理はない。
先生は先生であって先生ではないのだ。
一時的に記憶喪失になっちゃったかも。
またすぐに思い出すと思うよ。
【そう・・・】
今、コーヒー入れるね。

コーヒーのよい香りで僕も目覚める。

そう、アノ日。
先生を呼び止めた、あの日・・・。
僕が呼び止めて包帯コラボの話をしたがために
先生は電車を一本遅らせるハメになったのだ。
僕は先生の3駅ほど手前で降りた。

まさか、
その電車が事故にあうなんて。

あの日から先生の時間は止まったままだ。
事故の後遺症で眠ってしまうと記憶がすべて消えてしまう。
あの後僕はすごく勉強をして
なんとか先生を治せないかと頑張ったけど
僕の時代の医学でも
先生の病気は治すことができなかった。

だから、僕は決心した。

あの日。僕が話した夢物語を実現させて
先生に見せてあげたい。
それがせめてもの僕の償いだ。
たとえ、次の日には全て忘れてしまっても
ありがとう、を伝えたいんだ。

そして。コラボは実現された。
先生は全てに参加してくれたのだけど
やっぱり目が覚めると覚えてないようだ。
でも、気づかれてはいけない。
先生に、自分が病気だということに気が付いてほしくない。
だから、僕は
何度でもあのときの話をしてあげるんだ。

ひなた先生、3日間も眠ったままだったんだよ。
あんなに楽しみにしてたコラボだったのに。
【・・・コラボ。】
そ！あ、やっぱりまだ思い出せない？
僕は精一杯の演技をして
幾度と無く繰り返してきた動作で
パソコンのモニターを先生の方に向けてあげる。

ほら！先生の言ったとおり。
こんなに参加者が集まってくれてね、
すっごい盛り上がったんだよ？

【。。。参加者？】

そ。先生、思い出せない・・・？
僕はいつもここで切なくなる。
本当に、本当に先生の病気を治せたらいいのに。
【これ、あたしだ。。。】
うん、先生も参加してくれたんだ。
約束守ってくれたね。
本当にありがとう。

何度言っても、明日には忘れてしまうけど。

でも、いいんだ。
何度でも伝えるから。
僕が一番伝えたい言葉だから。
言いたい言葉だから。

あ　り　が　と　う　。

先生のくちびるが少し上がった。




ぱちん。

思い出した。
思い出した。
思い出した。

あたしは、あの日、事故にあった。
大怪我をしたけど無事だったんだ。
でも、そのことでこの少年が罪悪感を感じることを
あたしにはわかってた。
そう、未来を見てたから。
あたしの人生はあと少しだけど
この少年の未来はまだ長い。

だから、あたしの残りをこの少年にあげることにした。

少年が、伝えたい言葉を
何度も聞いてあげようと思った。
それには、自分の記憶を消してしまわないと。
新しい記憶に新しい言葉を入れてあげようと。
でも、それでは自分がココに存在する意味も
わからなくなってしまうので
あたしは自分にキーワードを設定して
その言葉で覚醒するように仕向けた。

キーワードは、
少年が一番伝えたいであろう言葉。

あ　り　が　と　う　。

。。。そう、また、伝えてくれたのね。
あたしにその言葉を言ってくれたのね。

あなたは、その言葉をあたしに伝えるために
何度も夢を実現させるの。

明日からも、また。









そして最終夜に続く☆